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オリジナル小説『私イズム!』第10回。

第9回はこちら。


第三章

『あえてリスクの高い技を出す事が、勝利に繋がる事も有る』 その3


 そしてランバトは決勝へ。
 人が多い上に、愛名も菜射も背が小さいので筐体の画面やプレイヤーはよく見えず、仕方なくモニター観戦する。

 キャラは、「伊臥 対 トイズ」。

 伊臥(いぶせ)の武器はロボット。
 白衣にメガネ、線の細い青年、と言ったいでたちの科学者キャラで、伊臥自身とロボットの同時攻撃が強力なキャラで、特に近距離でのラッシュ力の高さは確実にナンバー1の強キャラだ。

 対するトイズは、金髪の少年、と言う外見以外は謎に包まれたキャラで、名前も偽名だと言われている。
 武器は銃で、遠距離に強く、いかに敵を近付けさせずに戦うかが重要になる。
 熟練者の操るトイズは、相手に一度も触れさせずに勝つ事も可能だが、逆に、相手に動きを読まれると一気に近付かれて不利になる、扱いが難しいキャラでも有る。

 つまり、近付ければ伊臥が、遠距離を保てればトイズが有利、と言うとても解りやすい構図が展開される戦いになる。

『勝負、開始!』

 トイズ側としては、開幕はバックステップで距離をとるのが基本だ。
 特に伊臥を相手にした場合は、少しでも距離をとりたいのが心理。
 当然、伊臥もそれを読んで、ダッシュで近付くのがセオリー……だが!

 なんと、トイズが開幕に前方ダッシュで伊臥に近付く!

 当然、トイズがバックステップすると読んでいた伊臥はダッシュで距離を詰めようとしている!
 そこへ、不意を付く形でトイズの連続技がヒット。
 ノーゲージでの最大威力連続技で、伊臥の体力を約3割奪い取ると同時に、距離が離れる技で締め、自分の間合いにした。
 そこからしばらくは、トイズの独壇場だ。

「……巧いです…!」

 愛名は声を上げる。
 何とか近付こうと動き回る伊臥を、実に見事な動きで押さえ込む様は、まさにトイズの理想系を見ているかのようだった。

「わかるか?」

 思わず漏れた愛名の言葉に反応して、菜射が話しかけてくる。

「…ええ、トイズはあまり動かした事 無いのですがそれでもあの巧みな動きの見事さは解ります」
「そうか……覚えておきな、あのトイズ使いは、『未来視の銃口』って二つ名の、全国でもトップクラスのトイズ使いだ」
「未来視…?」
「そ、未来が見えてるんじゃないか、ってくらいに先読み能力が高いんだ。ともかく、よく見ておきなよ、大会ではライバルになるかもしれないからな」

 言われて、再びモニターに集中する愛名。
 試合は相変わらずトイズ有利の展開が続く。

 ――――だが、ほんの一瞬の隙を付いて、伊臥が一気に近付く!

「あっ!」

 再び声を上げる愛名。

「見ときなよ、こうなると伊臥は強いぜ!」

 菜射の言葉通り、上手くダウンを奪った伊臥の地獄の起き攻め!
 伊臥、ロボ、伊臥、ロボ、と隙の少ない連携で怒涛のラッシュを仕掛ける。
 その中で、中段と下段の二択を迫っていくのだが、どちらの攻撃がヒットしても、連続技を完璧に入れれば、体力を半分以上奪う上に、ダウンを奪いさらに起き攻め。
 チココのループ起き攻めと仕組みは同じようなものだが、ダメージと汎用性は桁違いだった。

 せめてもの救いは、ロボ技には使用制限が有り、七回技を出すと、しばらくの間ショートして動かなくなるので、その間耐えればそこからしばらくはロボを気にしないで戦えるという事。
 さらに、ロボットが攻撃を受けると、一時的に動きが止まると同時に、攻撃回数が一回減るので、それを狙うと言う手もある。
 特に、最後の一回を攻撃で減らされると、そのラウンドはもうロボットを使う事が出来なくなる仕様だ。
 ロボットの攻撃回数を回復できる技もあるのだが、ゲージを使う上に隙が大きいので使うタイミングが難しく、対伊臥戦では最も熱い駆け引きの一つになっている。

「中段入った!」

 誰かの声が響く。 
 画面では、伊臥の中段攻撃がヒットしてそこから連続技が決まる!
 見ると、ロボ技の残り回数は三回。
 強烈連携を四回までは凌いだようだが、ついに凌ぎきれずにくらってしまった。
 そのまま、残り三回を連続技で使いきり、トイズの体力を五割強奪う伊臥。
 最後にダウンさせて、その隙にロボ技の回数を回復させる!
 今、伊臥のPMゲージは二つ。
 PMゲージ一つ毎に、二回増やせるのだが、後の事を考えてか、ゲージを一つ残し、二回分だけ回復させる。
 回復は技の隙が大きいので、起き攻めは出来ず、むしろ敵側が僅かに有利となる。

 起き上がったトイズが、攻撃を仕掛ける!
 だが、僅かの差で伊臥のガードが間に合う!

 ……と同時に、[ガードキャンセルアタック]発動!

 [ガードキャンセルアタック]、縮めて[ガーキャン]と呼ばれる全キャラ共通のシステムは、ガード状態から瞬時に反撃する技だが、PMゲージを一つ使う上に、ダメージは全く無い。
 しかし、当てれば相手をダウンさせる事が出来るので、不利な状況から一気に有利になれる。
 ここからもう一度起き攻めが決まれば、勝負は決まったも同然!
 だが、ガーキャンをくらってダウン寸前のトイズに動き!

 [魂カウンター]発動!

 「PWM」の代表的なシステムの一つ、[魂ゲージ]。
 PMゲージとは違うもう一つのゲージだ。

 一段階しか溜まらない。
 ゲーム開始時に溜まった状態から始まる。
 時間で回復する。

 ……という違いが有る。

 それを消費して使えるのは、[魂カウンター]と[魂のモーションストップ]。

 [魂カウンター]…[魂カン]は、相手の攻撃をくらっている時だけに使える反撃技で、当てると[叩き付け]と同じように相手をバウンドさせる事が出来、一気に状況を逆転させられる。
 だが、それほど出が早く無いうえに無敵時間も短く、しかもガードされたり空振りしたりすると隙が大きい。
 さらには、隙も含めて、技が発動している間はずっと、攻撃をくらうとカウンターになってしまうという、極めてハイリスクハイリターンで、下手に使うと、ただゲージを無駄にするだけではなく、ダメージを余計にくらってしまうという、非常に使いどころが難しい技でもある。

 逆に[魂のモーションストップ]、略して[モースト]は、こちらの攻撃がヒットしている時にだけ使える技で、瞬時にキャラをニュートラルな状態にすることが出来る。
 これを使う事で、普通は繋がらない連続技を繋げたり、ガードされると隙の大きい技のフォローとして使ったりと、非常に使い勝手が良く、重要なシステムだ。

 当然、どちらか片方を使うだけでゲージは一度ゼロになるので、使いどころも重要な駆け引きになる。

 [魂ゲージ]は、そんな風に攻撃と防御どちらにも使える重要なシステムなのだが、どちらかと言うと、[モースト]に使うプレイヤーが多いのが、今の現状と言える。

 だが今、トイズが出した[魂カン]は確実にヒットするタイミング!

 ……と、誰もが思った瞬間だったが……ガードされる!

 そして、それによって生じた隙に連続技が決まり、一本目は伊臥の勝利で決着した。

「……今のどうなったんですか?」

 愛名は、隣の菜射に尋ねる。
 どう考えても、[魂カン]がヒットすると思ったのに……気付いたら伊臥が勝っていた。
 展開が速くてよくわからなかった、それが正直な感想だ。

「……ああ、今のは、[ガーキャン]に[モースト]をしたんだ」
「えっ!?」
「[魂カン]をくらってしまう、と瞬時に判断した伊臥側が、[ガーキャン]の隙を[モースト]で消して、ガードしたんだ」
「そんな事が……」

 [モースト]を攻撃のテクニックだと考えていた愛名からすると、それは衝撃だった。
 うまく使えば、守りにも使える、そんな奥深いものだったなんて……。
 その衝撃を引きずる愛名の前で、試合は進んでいく。

 二本目は、トイズが上手く伊臥を押さえ込んで勝利。

 二本先取なので、次を取った方の優勝だ。

 試合は白熱して、一進一退の状況に!

 お互いの体力は少しずつ削られ、両者残り三割強。
 そんな中、伊臥の連続技が決まり、ダウンを奪う!
 だが、[ロボ攻撃]の回数が尽きて、回復させる。
 まるで、一ラウンド目の最後を彷彿とさせる展開だ。
 そして、その時と同じように、起き上がったトイズの攻撃がガードされる。

 そこで、伊臥の[ガードキャンセル]!

 このままだと、一ラウンド目と同じ展開になる!

 誰もがそう思った瞬間……トイズが[ガーキャン]をバックステップで避けた!

 トイズは、攻撃に[モースト]をかけて隙を消し、最速のバックステップで[ガーキャン]を空振りさせたのだ!
 伊臥側としては、一ラウンド目と同じ様に[ガーキャン]に[モースト]をかける狙いだったのだが、空振りでは[モースト]は発動しない!

 だからこその、トイズのバックステップ!

 そして、空振りの隙に最大威力の連続技を叩き込んで、トイズの逆転勝利!
 会場は大盛り上がりで、本日のランバトは幕を閉じたのだった。

            第11回につづく。

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