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オリジナル小説『私イズム!』第11回。

第10回はこちら。


第三章

『あえてリスクの高い技を出す事が、勝利に繋がる事も有る』 その4


「……どうだった?」

 少し、熱に浮かされているような愛名に、菜射が声をかける。

「……凄かったです。一瞬の内に、あんなに奥深い攻防が、読み合いが展開されるなんて……格ゲーって、こんなにも極められるものなのですね…」
「そう、格ゲーは、本気でやればやるほど、対戦ツールとしての面白さはどんなものにも負けないと、アタシは思ってる。一瞬の判断、読み合い、テクニック、そして知識、やりこみ……全てが求められる。こんな興奮は、そうそう有るもんじゃない……だから、面白いのさ」

「私も……」

 愛名は、心の奥から搾り出すように、言った。

「私も、行けますか?あの高みまで…」

 その顔は、不安と、そして期待が入り混じっていた。
 だが、瞳は前を向いていた。
 真っ直ぐに、前を。

「……ああ、行けるさ。行こう、一緒に」

 そして、どちらからと言う事も無く、握った手に力を込める。
 お互いに、強く、強く、手を握り合う。
 未来への決意を、確認しあうように……。
 

「おっ!菜射じゃんか!来てたのか?」

 ランバトが終了し、散開が始まった店内で、一人の男が菜射に声をかける。

「おう、まあな」

 菜射も気軽に応えるその様子を見ていると、それなりに親しい相手に思える。

「ホントだ、菜射だ。どうしたんだよ今日は」
「さては逃げたな?リベンジしてやろうと思ってたのによ~!」

 さらに数人の人間が寄ってきて、話しかける。
 全員菜射の顔見知りのようだ。

「あははは!悪い悪い、ちょっと寝坊で…」
「なんだよそれ~」
「次はちゃんとエントリーしろよ」

 次々に人が集まり、菜射を中心に会話が進む。
 菜射は楽しげに話しているが、愛名はちょっと居場所に困って、菜射の後ろに隠れるようにしている。

「で、そっちの可愛い子はどちら様?」

 そのうち、一人の男が愛名に気付いて、少し覗き込むような動きを見せる。

「お、手なんか繋いじゃって!なんだ?彼女か?」
「さすが男前!よっ!女泣かせ!」

 ドッ、と笑いが起こる。

「バ~カ。コイツは、私たちの新しいチームメイトだよ。愛名って言うんだ」

 菜射に紹介されて、愛名はぺこりと頭を下げる。

「へ~…チームメイトって事は、『闘演舞(とうえんぶ)』出るのか?」
「おう、当然!」

 『闘演舞』は、「格闘ゲームの五輪」と呼ばれるイベントで、日本中のみならず、海外からもエントリーするプレイヤーがいるほどの、格ゲー業界最大のイベントだ。
 様々な格ゲーの大会が二日間に亘って開催される。
 ゲームタイトルによって、チーム戦だったり個人戦だったりするが、「PWM」はチーム戦で、三人で1チームとしてのエントリーのみが受け付けられている。

 幸果の言っていた「全国大会」とは、この「闘演舞」の「PWM」部門のことだ。

「もう一人は?やっぱり……」
「こちらも当然、ゆっか姉さ」
「うわ~そのチームキツイなぁ…!俺らじゃあライバルにもならないよ…」
「俺らって…お前だけだっての!」

 再び、ドッと笑いが起こる。

「ところで、幸谷さんは相変わらずの[ぶっぱ]スタイルなのか?」
「ああ、そりゃあもうな。ゆっか姉の「当て感」はズバ抜けてるよ」

 [ぶっぱ]とは、格ゲー用語で、[ぶっぱなし]の事を言う。
 [ぶっぱなし]とは、当たる確証の無い場面で、リスクの高い技を出すこと。

 つまり、当たれば大きいが、外れれば技の隙に連続技を叩きこまれて大ダメージ。
 まさにハイリスクハイリターンな行動だ。
 だが、これが成功すると、単純に相手にダメージを与えるだけでなく、相手の心理は、次も[ぶっぱ]が来るのではないか、と警戒して、だいぶ動きを制限されてしまう。
 
 幸果は、この[ぶっぱ]が抜群に上手い。
 そこから付いた二つ名は、「ぶっぱクイーン」。
 
 あまり格好良いとは言えない名前だが、幸果本人が気に入っている事もあり、今やすっかり定着している。
 ちなみに、菜射の二つ名は「ブラックホール」。
 投げキャラ使いとして有名な菜射は、まるで相手を吸い込むように巧みに投げを決めるところから、その名がついた。

「そう言えばさ、その子はどんな感じのスタイルなの?」

 菜射を囲んでいた一人が愛名を見ながら訪ねた。

「ん~…愛名は…そうだなぁ…」
 
 愛名をちらりと見て、菜射が考え込む。

「愛名のスタイルは……」

 少し緊張しながら、愛名は耳を傾ける。
 自分はいったい、どういう評価をされているのか興味はあるが、少し怖い気もする。

「そうだなぁ……しいて言えば…」
 と、菜射が何かを言おうとした刹那、凛として透き通った声が、空気を切り裂くように聞こえて来た。

「『闘演舞』の……話なの?」

 全員の意識が、そちらに集中する。
 と、そこには妙に丈の長い服を着た少年……いや、少女が居た。
 帽子を目深にかぶったスラリとした体系は、一見すると少年のように見えるが、足元のパンプスが、少女を主張している。

「……菜射…出るの?『闘演舞』」

 なんだか、常に何かを怖がっているかのように、両手を顔の辺りまで上げて、ビクビクしながら話す少女だった。

「ああ、出るよ」
「……幸果と、なの?」
「もちろん」

 その瞬間、少女の全身から、怒りのオーラのような物が発せられたような感覚を、その場に居た全員が感じていた。

「そう……まあ、ボクは絶対に負けないけどね、幸果なんかに」

 見た目から感じる年齢は、どう高く見積もっても高校生なのに、幸果を呼び捨てにしたうえに、「絶対に負けない」。
 それは、愛名には看過できない言葉だった。

「ちょっ…ちょっとあなた。幸果さんに対して失礼じゃありませんか?」

 菜射の後ろに体を置いたままだが、顔を出して文句を言う。
 愛名にとっては、とてつもなく勇気の居る行為だったが、それでも言わずにはいられなかった。

「……ひうっ!ごめんなさい…!…あんたが、新しいチームメイトなの?」

 少女は愛名の声にビクリと大きく体を震わせ身を縮めたが、その視線には強い敵意が感じられて、愛名は少し怯む。

「…そ、そうです……」
「その、強いん、ですか?」

 今にも殴られるかのように、両手でしっかりと頭をガードしながら話す少女。
 それに戸惑いつつも、愛名は言葉を返す。

「……えっと…その……弱くは無い…と思います…」

 正直、レベルの高い試合を見たばかりな事もあって、強いとは言いづらかったが、ここで引くわけにもいかない。

「そう…じゃあ勝負しましょうか……まあ、一億%私が勝ちますけど…あう、すみません!」

 ……強気な事を言ったかと思えばビクビクして謝る。
 正直愛名は、どう接すればいいのか非常に悩んでいた。

「気にすんな、こいつはこう言うヤツなんだよ。弱気で臆病なくせに、発言は強気で自信満々、ってね」

 助け船のような菜射の説明にも「はぁ…」としか返事の返せない愛名だった。
 しかしそんな事には構わずに、少女は先ほどまでランバトが行われていた筐体の前へ。
 今は、大会後のサービスでフリープレイになっている。
 そこでは二人の男が対戦をしていたが、少女がビクビクしながらも一言二言声をかけると、二人は台から離れて、愛名の方に視線を向けた。

「さあ…始めましょうか、勝負は見えてますけど。うぅ…ごめんなさい」

 ……愛名は、少し悩んだ末、思い切って、菜射の手を放し、筐体へと向かう。

(なんだか妙な流れになってしまいましたけど、私だってこの数日特訓したんですから……そう簡単には負けません…!)

 愛名は、どこかで自分の中に自信を感じていた。
 全国でもトップクラスのプレイヤーと、数日とはいえ特訓していたのだという自信を。

「…………」

 菜射は、試合に挑む愛名の背中を黙って見守る。
 そして、少女と愛名がお互いに台の前に座ると、周りからざわざわと声が聞こえてくる。

「あの子、幸谷 幸果のチームメイトらしいぜ」
「マジで?全国大会個人戦優勝の?」
「幸谷 幸果のチームメイトとランバトチャンプの対戦か……見とく価値有るな」

(ランバト…チャンプ?)

 その言葉に、愛名が「まさか!」と気付いた時には、少女はもうキャラを選んでいた。

 そのキャラは……トイズ。

 つい今まで行われていたランバトで優勝した、そのトイズ。
 それがまさに、この少女だった。

 「未来視の銃口」こと、風斬 燕(かざきり つばめ)。

 全国でもトップクラスの、トイズ使い――――――

      
          第12回につづく。

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