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オリジナル小説『私イズム!』第12回。

第11回はこちら。


第三章

『あえてリスクの高い技を出す事が、勝利に繋がる事も有る』 その5


『決着!』

 ――――――圧倒的、だった。 

 一ラウンドも取れないどころか、二ラウンド目は、パーフェクト負け。
 ただの一撃も、当てる事は出来なかった。

 周囲のざわつきは、開始前とは別の意味合いを持っていた。

「おいおい…あの子、正直弱くないか?」
「あれで大会出て大丈夫なのかよ…」
「幸谷 幸果も、二冠は無理かな」
「個人戦優勝とは言え、チーム戦は試合数が多いからな、いくら幸谷でも全勝出来る訳ないし」
「実質二人みたいなもんか、それだとキツイだろ」

 それらは、見ている側からすれば、真っ当な感想だった。
 ここに集まっているのは全員、大会出場を考えているような強者ばかり。
 そんな人間が見れば、愛名の動きが洗練されていない事は明らかだった。

 ……愛名は、自分の体がカタカタと震えて行くのを感じていた。

(そんな……こんなに…ここまで差が有るの?)

 僅かに有った自信……いや、過信が、無残に崩れていく。

(どうしよう…私の……私のせいで幸果さんまで…!)

 焦り、怒り、恐怖、混乱、そして、幸果に対する謝罪の気持ち。

(あんな……あんな簡単に請けたらダメだったんだ!私なんかが、幸果さんのチームメイトに相応しい筈無い…!)

 レバーを握ったままの手が、力無く開かれていく。
 「戦意」が、急激に殺がれて行く……。
 と、急に影が視界を遮る。
 愛名が顔を上げると、すぐ側に、燕が立っていた。

「楽勝…なのです…」

 怯えながらそう呟き、意地悪そうに、ニヒッ…と笑う。
 思わず、愛名は目を逸らす。

「………ボクは、さっき決勝で戦った伊臥使いと、もう一人、全国レベルのプレイヤーと一緒に『闘演舞』に出ますです…すいません」

 あの伊臥と……!
 それは、愛名にとって、底なしの沼に沈みかけている時に、上から踏みつけられる位の絶望。

「あなたのような素人が、幸果のチームメイトの資格は無い、です。この弱者。辞退をお奨めします。ひうっ…ごめんなさい…本当のこと言ってごめんなさい…!」

 ……………………………!!

 愛名は、弾かれたように立ち上がり、走る。
 とにかく今は、この場に居たくなかった。
 ただ、逃げたかった。
 羞恥から、恐怖から、そして、重荷から。
 店を飛び出し、何も考えずに走る。

(今すぐ断りに行かないと…!やっぱりすいません、って言わなきゃ…!私なんか……!)

 走る。走る。走る。

 息が切れるのも構わず、何処へ向かっているのかも定かではなく、とにかく全力で走り、さすがに限界が近付いた頃……突然、腕をつかまれた。

「はぁ……やっと追いついたぁ~…足速いっての!」
「………菜射っさ…ん」

 息を弾ませた菜射が、愛名の腕を掴んでいた。

「どう……っはぁ……し…て……」

 言葉を吐き出そうとして、愛名は自分の息が限界まで荒くなっている事に気付く。

「わた…私……はぁ…私…なんて……な…ん」

 それでも言葉を紡ごうとするが、上手く言葉が出てこない。
 それどころか、息苦しさは増すばかりで、少しも楽にならない。

「は…かは……はぁー……はー…・!」

 序々に、胸が苦しくなり、頭がふらつく。

「……おい、愛名?どうした?おい!」

 瞬間、大きな揺れが愛名を襲い、ガクン…と膝から崩れた。

「おい!愛名!?しっかりしろ!おい!」

 愛名は、ゆっくりと瞼が閉じていくのを自覚しながら、体が重力に負けるのを感じた。

「ちょっ…!」

 横に倒れそうになるのを、菜射が抱きかかえる。

「大丈夫か?おい!おいってば!」

 菜射の声が少しずつ、遠くなって――――――


        第13回につづく。

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