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オリジナル小説『私イズム!』第18回。

第17回はこちら。


 第六章

[追い詰められて画面端] その1
 

「もう一度、チームメイトにして頂けますか?」

 その愛名の言葉を、菜射も幸果も笑顔で受け入れた。

 元々二人は、もしそう言ってきたら受け入れよう、と二人で話していたのだ。
 愛名としては、あんな事を言っておいて戻るのは心苦しい気持ちも有った。

 けど、燕との再戦を経て、少し考え方が変わった。

 確かに、また勝負は負けたけれど、以前とは違う負けだったから。

 最初の時は、何がなんだかわからないままに負けてしまった。

 しかし今回は、ちゃんと理解して負けた。

 どこが悪かったのか、どうすれば良かったのか、あの時はどう動くべきだったのか……後から思い出せば出すほど、自分の改善すべき部分が見えてくる。

 それは、成長できるという事。
 何一つ希望の持てなかったあの時とは違う、意味のある負け。

 それを経験してしまったら、このまま終われない。

 ………二人には迷惑をかけるかもしれない。
 それは今でも、心苦しい。

 ――――でも、力にもなれるかもしれない。

 ……なら、何もしないで終わりたくない。

 なるべく、自分の力で自分を磨く。

 その上で、二人に追いついてみせる!

 その覚悟を抱く事によって、決意できたのだ。
 もう一度、チームメイトに――――――。


・・・・・・


「愛名さん、あなた最近、ゲームセンターに出入りしているって話じゃないの」
「………え?」

 夕食時。綾塚家食事部屋。
 家族で使うには少し大きすぎる食卓テーブルで、珍しく全員揃っての食事。

 両親、祖父母、そして愛名の五人。

 これが、今の綾塚家の全員だった。
 それに対して、使用人は三十五人居ると言うのだから、綾塚家の裕福さが見えると言う物だろう。
 今も、食卓の周りを囲むように、十人程度の使用人が、いつ用事を言いつけられても良い様に待機している。

 そんな状況で、愛名の母、ちずるが唐突に「愛名さん、お話があるのだけど…」と言い出し、それに続いたのが、先ほどの言葉。
 なんでも、綾塚家で雇っている使用人の一人が、ゲーセンに出入りする愛名を見かけて報告したらしい。

 愛名は、こっそりと視線を香澄に向けたが、香澄は、それはもう思い切り、もうちょっとこっそりやりなさい、と愛名が思ってしまうほどに、全力で首を横に振り、自分では無いと主張する。

「……本当なのか?愛名」 

 父、影二(えいじ)がちずるの言葉を聴いて、強い視線を愛名に向ける。

「えっと……その…」 

 愛名は言葉を濁す。
 ここで嘘をつけばこの場は逃れられるかもしれないが、それが出来ないのが愛名と言う人間だった。

 それに、愛名は父が苦手だった。

 常に仕事の事しか考えていないような印象で、あまり会話をした記憶も無い。
 他の家族が、箸の持ち方ひとつとっても必要以上にうるさく口出ししてくる中で、父だけはまるで自分に関心が無いような、そんな気がしていた。
 母や祖父母が、少なくとも後継ぎと言う名の道具としての価値を自分に求めてくるのに対して、父は自分に何かを求めてくることもしなかった。
 ・・・・・自分を愛して欲しい、とは言わない。
 それでも、必要として欲しいと、そんな事を想ってしまうのは歪んでいるのだろうか。

 色々な思考が脳裏をめぐり、父の問い掛けにはっきりと言葉を返せないで居ると、それは質問に対する肯定と受け取られたようだ。

「……何てこと?ゲームセンターなんて、不良の溜まり場じゃあないですの?」

 祖母、ユリが、汚い物を見るような目を向けてくる。
 それは誤解で偏見だと愛名は言いたかったが、口を挟める雰囲気では無く、唇を噛み締め言葉を飲み込む。

「ふん……この綾塚家の恥さらしめが……!だからワシは反対なのだ、女子に家を継がせるなどと……!」

 祖父、大門にいたっては、愛名を見ようともせずに、的外れな事を言い始める。

「父さん、それは今は関係無い話では?」
「そうですよお義父さん。そんなに私の娘に家を継がせたくないので?」

 影二とちずるがそれに反論する。

 ……が、そんな言葉は、この場の空気をさらに悪くする事しかできなかった。

「…当然だ…!ただでさえ家を継ぐのは男子であるべきなのに、貴様のような女の娘など……!汚らわしいわ!」

 愛名の体が、ビクっと痙攣する。
 血の繋がった実の祖父からの言葉とは思えないその発言は、愛名の心を傷つけるには充分すぎた。

 …………しかし、これは決して特別な出来事ではない。

 愛名は幼い頃から、両親と祖父母の確執の中で苦しみ、傷つき、耐えてきた。
 何が原因でこの状況が生まれたのか、愛名は知らない。
 知りたいと思ったことも有ったが、今ではどうでもいいと思っている。
 この状況を受け入れる、そう決めたから。

 それは、強さでもあり、弱さでもあった。

「………ともかく、愛名さん」
「……はい」

 言い争いを続けていた家族の目が、一斉に愛名に戻る。

「今後、ゲームセンターには二度と立ち入りを禁止します。良いですね?」

「……!そ…ちょっとお待ちください!そんなの困ります!」

 そんな事をされたら、特訓が大きく遅れてしまう。
 幸果や菜射がどんなに上手くても、どうしたってパターンは限られてしまう。
 今はとにかく、色々なプレイヤーと試合をこなし、どんな相手にも対応できる力を身につける事が最優先。
 格闘ゲームで重要なのは、相手の動きを読むこと、裏をかくこと。
 連続技の練習は、実は二の次だ。

 もちろん、連続技を覚えるのも重要だが、難しい連続技を一度決めるよりも、簡単な連続技でも二度三度と入れられる状況を作る方が、結果的に勝ちに繋がるのだから。

 今愛名に必要なのは、そんな「経験」と言う名の、実践でなければ得られない物なのだ。

 しかも、大会まであと二週間。 
 その間に予選を勝ち抜かなければならない。…という事を、愛名は最近聞かされたばかりだ。

 格闘ゲームの全国大会は、基本的に「店舗代表」が集まる事になっている。
 各地のゲームセンターで予選を行い、その店舗の代表として全国へ行く。
 もちろん、普段からそのゲームセンターに通っていなくても、遠くから権利を取りに行く事も問題は無い。
 残り二週間で、予選の行われるゲームセンターは近所で二箇所。
 遠征に行ける距離にも二箇所。計四箇所のどこかで優勝しなければならない。

 最悪の場合は当日予選も存在するが、全国から大勢のプレイヤーが最後の切符を取りに来る状況で、たった一つを勝ち取るのは容易ではない。

 なので、何とかそれまでに出場の切符を手に入れたい、と言うのがチームの総意だった。

 その状況を考えれば、今出入り禁止はあまりにも致命的……!

 さらに愛名には、「チームに戻して欲しい」と言った負い目がある。
 この上さらに、「やっぱり出れません」では、あまりにも礼を欠いた行動になってしまう。
 その想いで、何とか抵抗する愛名。

 ―――――だが、それはむしろ逆効果だと、気付くべきだった。

「黙りなさい!」

 愛名の様々な弁明を、怒号で一括する ちずる。

「親の言う事に逆らうなんて……これもゲームの影響なのかしら?」
「そんな!違う!違います!ただ私は…!」
「問答無用です!これから一ヶ月間、一切の外出を禁止します!学校の登下校も、車で送り迎えをして、寄り道は許しません。良いですね!」

 それは、あまりにも絶望的な仕打ち。
 そんな事をされたら、大会そのものに出ることすら出来なくなってしまう!

「お願いします!それはお許しください!学校の勉強だって、成績は落ちていません!」

 つい先日もテストが有ったが、愛名の成績は、学年で四位。
 一流の進学校でもある春麗学園で四位と言えば、どの大学でも合格ラインに入れる程だ。
 もし成績が落ちたら、そこから何か探られるかもしれない。
 そう考えた愛名は、勉強とゲームを両立しようと必死に努力していたのだ。

「それは関係有りません。勉強は出来て当たり前なのです。その上で、品行方正な振る舞い、他人からの羨望、絶対的なカリスマ……それらが具わってこそ、綾塚足り得るのです」

「……それは解っています。ずっと言われて来た事ですから、けど、それとゲームは関係無いと思います!」

 何とか、必死に抵抗を試みる愛名だが……。

「うはははは!やはり貴様の娘よのう?愚かな女の娘もまた愚か!今からでも本気で養子を考える事にするかのぅ?」
「………っ!……ご冗談をお義父様」
「くはは、冗談で済めば良いがのう?恨むなら、娘の躾も出来ん己の無能さを恨め」

 自分の振る舞いのせいで、母が責められている。
 それに気付いた愛名は、これ以上の抵抗が果たして正しいのかどうか……自分が揺らぐのを感じていた。

「……愛名さん、言う事を聞きなさい、良いわね?」

 強い口調で言い聞かせようとする母の瞳に、僅かに願うような感情が見えた気がして、愛名は困惑する。
 母が自分に助けを求めているかの様な、そんな錯覚。
 自分が母を救えるという責任感。
 必要とされている喜び。
 
 ・・・・・これから一生を過ごすであろう、この家、家族との関係・・・。 

 頭の中を様々な思考が浮かんでは消える。
 何が正しい選択肢なのか、わからなくなる。

「……はい、解りました、お母様」

 一瞬折れた心が、その言葉を吐き出させた。

 後悔は直ぐにやってきたが、もう、取り返しはつきそうになかった……。

         第19回につづく。 

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