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オリジナル小説『私イズム!』第3回。

第二回はこちら。


第一章
[レバーを一瞬下に入れてからジャンプすると大ジャンプになるからそんな感じで飛べ] その2

「はい到着!」

 十分後、二人の足が止まったのは、どこにでもありそうな普通のマンションの前。
 白い壁が清潔感を漂わせるが、特別大きいわけでも無い、本当に普通のマンションだった。
 入り口には、「メゾン・ド・ボガード」と有る。このマンションの名前だろう。
 きっと管理人は兄弟で、弟が骨法をやっていたりするに違いない。

「…ここは?」
「言ったろ?秘密基地だよ」

 二重扉の入り口をくぐり、エレベーターで最上階へ。
 廊下には、六つの扉が有り、その一番奥の部屋がどうやら目的地らしく、先導していた菜射が立ち止まる。

「ちょっと待ってて」

 鞄をがさごそと探る菜射。
 どうやら鍵を探しているらしい。
 その間に、愛名は表札に目をやるが、そこには何も書いてなかった。

「お、有った有った、さあ入って」

 見つけたカギでドアを開けて愛名を中に誘い入れる菜射。

「……お邪魔します」

 ちょっとだけ怯えながらも背筋を伸ばし、一歩足を踏み入れると……やはり、何てこと無い普通の部屋に見えた。
 入ると、玄関から続く真っ直ぐな廊下。
 右側にキッチンが有り、廊下を挟んで左には、トイレや風呂だと思われるドア。
 奥には、格子ガラスのドアの向こうに、リビングの様な部屋、テレビやソファーが見える。
 
「お~い!誰か居る?」

 菜射は、靴を脱ぎながら奥に声をかけるが、返事が無い。

「居ないのか…まあいいや。」

 呟きながら、菜射は廊下奥のドアを開ける。
 おどおどしながら後に続きドアをくぐった愛名の目に飛び込んで来たのは………十畳程の、広くも無く狭くも無い正方形のフローリング部屋。 
 そこに、部屋の外からも見えたソファーとテレビ。ドア側の壁の近くには、小さなテーブルもあって、その横にはキッチン。キッチンは、この部屋からも廊下からも入れるようになってるようだ。
 そんな何の変哲も無い部屋で唯一目を引くのは、しいて言えば、テレビ台の上に置かれた四十六型の薄型テレビが、部屋の広さに対してかなり大きい、という事くらいだろうか。

「待ってて、直ぐに準備するから」

 言うと、菜射はテレビへと向かい、テレビ台の扉を開き、中から何かを取り出す。

「……あの、ここっていったい…?」
「ん?だから、秘密基地だよ」
「……私には、狭いマンションの一室に見えますけど……」
「狭いって…普通の感覚だと十分の広さなんだけどなぁ…」

 菜射の苦笑いに少し驚きながらも、改めて、部屋を見回す。
 全部を合わせても自分の部屋の半分程度しかないのに……広い?
 なんだか不思議な、ちょっとした感動にも似た感覚に浸っていると、ふと愛名の目に入る違和感。
 緊張で下向きがちだった視線を少し上に向けると……そこかしこに貼ってあるポスター。
 それは、愛名でなくても知っている、メジャーなゲームのポスターから、全く知らないものまで、様々なゲームのポスターだった。
 昨日、愛名がゲームセンターでプレイした『PWM(パーソナル・ウェポン・マスター)』のポスターもあった。

「これって……」
「さ、用意できたよ!」

 その声に、視線をそちらに向けると、そこには……ゲーム機が用意されていた。
 本格的なスティックコントローラー二つ付きで。

「あ、それ……!」

 値段も高く、大きさも大きいが、ゲームセンターの筐体のプレイ感覚に極めて近い事で有名な、スティックコントローラー。
 愛名も欲しかったが、大きすぎて部屋に置くのはちょっと抵抗が有った代物だ。
 もちろん、大きすぎて、とは言っても愛名の部屋の広さなら何十個置いても平気なのだが……別の意味で大きいと困るのだ。

「へへ~わかる?これ良いでしょ!」

 惹きつけられる様にコントローラーに近付き、レバーとボタンを少しいじる愛名。

「……わ、凄いですこれ…!レバーの硬さとかも凄く良い感じで…!」

 家にも、それなりのコントローラーは有るが、それとは段違い。値段的が倍以上違うのも頷ける出来だった。

「動かしてみたくなるっしょ?」
「えっ?あ……そんな、別に私は……」

 夢中で見ていた自分に気づき、少し照れと強がりが生まれる愛名。

「……そう?じゃあ、こっちのやつで良い?」

 すると菜射は意地悪な表情で、棚の奥から少し安くて小さいタイプのスティクコントローラーを出そうとする。

「あ……いや、その…」

 思わず慌てる愛名。
 あのコントローラーを前にしたら、アレで操作したい…!
 そのゲーマー心理が解りきっている菜射は、「ふふ~ん」とにやにや笑いながら、再度問いかける。

「どっちが良い?」
「……あ、あの……!こっち…が、良いです!」

 愛名は顔を真っ赤に染めながらも、大きい方を指差す。
 すると菜射はニカッ!と笑って、「だよな!じゃあハイ!」と大きなコントローラーの前に愛名を座らせた。
 恥ずかしさと、少し屈辱感にも似た気持ちを抱えながらも、コントローラーに触れ、先ほどよりも強くしっかりと、ガチャガチャいじってみる。

 ……なんて心地良さなのかしら…!気持ちいい…!

 これなら、苦手なコマンド入力も上手く出来るような、そんな予感さえする。
 先ほどまでの感情は薄れ、期待感が胸を満たし始める。

「じゃ、対戦しようぜ!」

 言って、アグラをかいて座り、ゲーム機のスイッチを入れる菜射。
 愛名は頷き、姿勢を正し、足を正座に組む。

「……正座なの?!大丈夫?」
「え?ええ、家ではいつも正座ですし。私、ずっとお茶と習字を習ってたので、正座が自然なんです」
「はぁ~……見た目だけじゃなくて、ホントにお嬢様、って感じだねぇ…」

 本気で感心したような様子の菜射だが、愛名としては少し複雑な気持ちだった。
 それはきっと、自分の望んだ姿じゃない。
 そんな思いが、常に心のどこかにくすぶっていたから。

 ガガンッ!

 テレビから、大きな効果音が響く。
 いつの間にか、ゲームのタイトル画面が出ていた。

『PWM(パーソナル・ウェポン・マスター)』  

 その名の通り、各キャラがその個人を象徴する武器を持ち戦う、2D武器格闘ゲームだ。
 攻撃ボタンは、弱・中・強・武器・叩きつけ、の五つ。
 続編の多い格闘ゲーム業界において、完全新作で大ヒットをとげた、格闘ゲーム界の新星だ。
 ほぼ全キャラが空中ダッシュと二段ジャンプを使える事によって生まれるスピード感のあるゲーム展開と、魅力的なキャラクターが人気を集めている。
 多彩なシステムは、覚える事も多いが、使いこなせばどのキャラでも戦えるゲームバランスを生み出していて、対戦ツールとしても評価が高い。

「さて…愛名は、キャラはやっぱりチココ?昨日もそうだったよね」
「あ、はい。まだチココしか練習してないので…」

 愛名のマイキャラ「チココ」は、素早い動きを駆使して手数で勝負するタイプの、典型的なスピードキャラだ。
 動きが早いのと引き換えに、攻撃力、防御力共に低い。

「そうなんだ…どうしてチココなの?」

 どんなにゲームバランスの良いゲームでも、格闘ゲームである以上は「キャラ差」が存在する。
 所謂、「強いキャラ」と「弱いキャラ」。
 チココは、完全に「弱いキャラ」の代表とも言える存在で、一部では「ネタキャラ」とさえ呼ばれている。
 つまり、本気で勝とうと思ったら、チココは「使えない」と言う意味だ。
 もちろん、実際にはそんな事は無いのだが、そう比喩される程に、勝ち難いキャラではある。

「正直キツくない?」
「いえ………でも…その…」
「なに?」

 愛名は、顔を真っ赤にして俯き、呟いた。

「か…可愛かったから…!」

 その瞬間、『私、お嬢様の為に頑張ります!』と、画面から声がした。
 それは、キャラ選択画面で、チココを選ぶと言うセリフ。
 チココのキャラ設定は、「中学生メイド」。
 セーラー服とメイド服を掛け合わせたような衣装と、お仕えしているお嬢様の為にけなげに頑張る姿には、熱狂的なファンも多い。
 武器は、メイド道具一式で、モップやホウキ等だ。

「そうなんだ、こういうの好きなの?」
「す、好き…って言うかその……か、可愛い女の子を見てると、胸がキュ~ンってしませんか?!だって、こう……その…可愛いじゃないですか!可愛いんですもん!」

 顔を真っ赤にしながらも、理屈にもならない理屈を熱を持って語る愛名。

「……変ですか?」

 けれど、急に不安になり、そう問いかけてしまう。

「ん?いや、別に変じゃないさ。……凄く身近に似たような趣味の人間が居るから、気持ちはわかるよ」
「そ、そうですか」

 とりあえず、否定されたり引かれたりしなかったことに安堵する。
 女なのに可愛い女の子が好きなんて、変に思われるかと思っていたので、胸をなでおろす思いだった。

『おおぉ!一撃、滅殺っ!』

 そう叫んだ菜射の選んだキャラ「陣梧(じんご)」は、連続技よりも、一発の破壊力に重きを置いた、投げを主体としたキャラだ。
 ガクランに赤いハチマキをたなびかせると言う、わかり易過ぎる熱血キャラだが、主人公のライバルキャラと言う設定とその熱さが、男女問わず人気を呼んでいる。
 投げキャラなのに使いやすいのも人気の一つで、キャラランクとしては強キャラに分類される、このゲームを代表するキャラの一人だ。
 武器は、その姿を自由自在に変える「学ラン」。

「ともかく、始めよ!」
「は、はい!よろしくお願いします!」

 初めての相手との対人戦に、緊張感と胸の高鳴りが同時に襲う。

(この瞬間の高揚感……ゾクゾクします・・・っ!)

 画面には二人のキャラが揃い、その真ん中に妙に味のある審判キャラが登場し、宣言する。

『勝負……開始!』

           第4回につづく。

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