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オリジナル小説『私イズム!』第7回。

・第6回はこちら。


 第二章
『ダッシュの最中はすぐにガード出来ないから、思い切って無敵技をぶっ放すのも選択肢の一つ』 その2


『決着!』

 愛名と幸果の初勝負は、あっという間に決まった。
 当然のように、愛名のストレート負けで。

「す…凄いです幸果さん!どうしてこんな動きが出来るんですか?!」
「うふふ~。ありがとう~。でも、この位なら、知識と練習が有れば誰でも出来るようになるわよ~」
「本当ですか?私でもですか?」
「ええ、きっと出来るわ~。あ、そうだ、ちょっと待ってて」

 そう言うと、幸果はテレビ台の脇に積んである雑誌の山に手を伸ばす。

「ん~…あ、これこれ~。はい!」

 幸果は、雑誌の中から一冊の本を取り出して、愛名に手渡す。

「これって…「PWM」の攻略本?」
「うん、そんなようなものね~。けど、格闘ゲームの場合は攻略本って言うよりも、ムック、って言い方かなぁ~」
「ムック」

 思わずオウム返す。

「とにかく、このムックは凄く知識を付けるのに役立つから、読んでみるといいと思うわよ~」
「あ、ありがとうございます!」

 早速、ムックを開く愛名。
 愛名も、別のムックは持っていたが、内容の濃さが段違いだというのは流し読みしただけでも理解できた。

「これは~アーケードゲーム専門誌が作ってるムックだから、内容が凄くしっかりしていておすすめなのよ~。良かったら貸してあげるから、お家でも読んでみてね~」
「よろしいんですか?ありがとうございます!」

 うわぁ…!幸果さんから本借りちゃった…!
 浮かれつつも会話をしながらチココの記事を読んでいると、連続技の紹介が目に入る。

「あ、これって、さっき幸果さんのチココがやってた連続技ですね!」
「そうなの~見た目も面白くて、ダメージもそれなりだからわりと使うのよ~」
「そうなんですか……あと、ちょっと、練習して構いませんか?」

 知ってしまえば試したくなるのはゲーム好きのサガと言える。

「いいわよ~」

 幸果は手馴れた様子で、愛名の前に置いてあるスティックコントローラーを操作し、トレーニングモードに入る。
 自然と、体の距離が縮まり、愛名はドキっとした。

「はい、どうぞ~」

 キャラ選択画面で、幸果は体を離す。
 ふわっ…と良い匂いが愛名の脳を揺らしたが、今は早く試したい気持ちが強いので、何とか正気を保つ。
 さあ、いざ練習を……と思ったところで、先ほどの事をふと思い出す。

「……そう言えば幸果さん、あの「きゅふ」って笑いは…」

 と言いかけたところで、いつの間にか幸果の後方に移動していた菜射が、再び「しぃ~」のポーズを……。

「…ん~?なんですの~?」

 途中で質問を止めた愛名を不審に思って訊き返してくる幸果だが、後ろで菜射が、「しぃ~」に加えて、首をぶんぶんと横に振り始めた。

「……いいえ、何でもありません。すみません」

 何かを悟った愛名は、不自然に質問を取り下げた。
 世の中には、知らない方がいい事、触れない方がいいものが有るという・・・・きっとこれがそうなんだろう、と自分を納得させる。

「……そうなの~?変な愛名ちゃん~」

 幸果は当然首をかしげるが、何も無かったフリをして、愛名はごまかすようにゲームに意識を戻す。

「…さて・・・・・いきます!」

 気分と意識を変えるために、一つ大きく息を吐く。
 そして、コントローラーに手を添えながら、雑誌を開いたまま横に置き、もう一度じっくりみる。
 
 それは、このゲームの特徴的なシステム「叩き付け」を使用した連続技だった。

 「叩き付け」は、出は遅く、それ自体のダメージも低いが、ヒットすると相手は地面に叩きつけられた後、バウンドして高く浮く。
 当然、浮いた所には連続技を決める事が出来るので、この技を上手く当てる事は勝利への近道となる。
 そんな、叩き付けを利用した連続技だ。
 
 画面端限定の連続技で、最初に叩き付けを当てて、直ぐに[お食事の用意です]でテーブルクロスを設置する。
 けれど、それは当てずに、ジャンプして[ジャンプ中]→[ジャンプ武器]→[ジャンプ叩き付け]と繋げる。
 空中で出した叩き付けは、地上とは性能が違い、相手を地面に叩き付け、そのままダウンさせる効果がある。
 とは言え、当てる位置が高いと、地上に付く前に受身を取られてしまうのだけれど。
 ともかく、その流れで叩き付けを当てると、地面に当たる前に、空中を漂ったままでいた[お食事の用意です]に当たる。
 そこへ、一足先に着地したチココが、もう一度叩き付けを当てると、再度同じ連続技を決める事が出来る。

 ループ連続技と言われる流れだが、『永久コンボ』と呼ばれる、最初の一発が決まったら体力が無くなるまでヒットし続けてしまう連続技を無くす為に、連続ヒット数が増えると、徐々に距離が離れるようになるので、実際は2~3回繰り返すのが限度だ。
 それでも、強力な連続技であることは間違いない……のだが、決まっても相手の体力を3割強程度しか奪えないのがチココの弱さたる所以だったりする。
 とはいえ、出来ないよりは出来た方が良いのも当然の話だ。

「あ~!また失敗ですぅ…」

 練習を続けていた愛名の叫びが響く。

「ん~……何がダメなんだろう…?」

 ムックに書いてある通りにやっているのに、どうにも上手くいかず、頭を抱える。

「あのね~コツは、[ジャンプ武器]から[ジャンプ叩き付け]に繋げる時に、ギリギリまでディレイをかけるの~」

 と、横で見ていた幸果の助言が入る。

「……ディレイ…ってなんですか?」

 だが、愛名にはちょっと難易度の高い助言のようだった。

「え~と~…ディレイって言うのは~遅らせるって意味なの~」

 けれど、幸果は嫌な顔一つせずに説明を続ける。

「相手に受身を取られないギリギリのタイミングで技を繋げると、タイミングが合うのよ~。けど、それ以外の部分は全部最速でやらなくちゃだから、そのテンポのズレが難易度を上げてるの~」
「……そうなんですか」

 解ったような解らないような…と思いつつも、言われたとおり[ジャンプ武器]から[ジャンプ叩き付け]への繋ぎを、ちょっと遅らせてみる。

「…あ」

 上手くはいかなかった、いかなかったが……今までよりも、決まりそうなイメージが見えた気がした。

「今みたいな感じですの?」
「うん、そうよ~!上手い上手い!」

 不意に頭を撫でられて、愛名はちょっと照れる。

 ……だが、依然として成功しない。

 遅らせすぎて繋がらなかったり、上手く繋がっても、焦ってその後の連続技を失敗したりと、時間ばかりが過ぎて行く。

「ん~~~!!」

 徐々にイライラが募っていく愛名。
 それを察したのか、再び幸果が助言を買って出る。

「ジャンプしての[中][武器][叩き付け]のタイミングは~タタン・・タン、っリズムで押すと良いわよ~……こんな感じで~」

 と、急に幸果は、愛名を後ろから抱きしめる様な形になり、そのまま手を重ねる。

「はうぁ…!あ…あの、幸果さ…!」

 先ほどまでのイライラは一瞬で吹っ飛び、代わりに全身を熱が包む。
 せ、背中!背中に胸の感触が…!

「ほら~こんな感じで~」

 幸果は、そのままの姿勢でスティックコントローラーを操り、見事に連続技を決めてみせる。

「どう~?感覚掴めたかしら~」
「はう…ひふ…あう…」

 だが、愛名はそれどころではない。
 あまりの事に、頭から湯気が出そうだ。

「……?どうしたの~?」

 愛名の様子がおかしい事に気付いて、幸果はそう声をかける。

「あ、あの!その!ゆ、幸果さんがその!凄くキレイでその、柔らかくて!だから、き、緊張して…!」

 頭が真っ白になっている愛名は、何も考えずに思ったことをそのまま口に出す。

「あらら~ありがとう、嬉しいわ~」

 それに対して、少し照れた様子で笑顔を浮かべる幸果だったが…

「けど~…」

 と、次の瞬間、幸果の纏う空気が妖艶なものに変わる。

「あなたも可愛いわよ……愛名ちゃん」
「え?」

 と愛名が振り向くと、すぐ傍に幸果の美しい顔。

「本当に、可愛いわ…」

 すっ…と手を愛名の頬に添え、ゆっくりと、どこかいやらしく撫でる。

「え?あ、あの、その…」

 突然の事にどうしていいかわからず、ただ呆然とする愛名。
 真っ直ぐに瞳を見つめてくる視線から、目が逸らせない。

「力を抜いて……」

 吐息混じりにそう呟くと、幸果は突然に……愛名の口にキスをした。

「…………………!!」

 脳が痺れるような衝撃に固まる愛名の口内を、幸果の舌が蹂躙する。

「ん……はぁ…・ちゅ…ちゅぷ…っ……ふぁ……ちゅ、ちゅぱ……はふっ…」
「……ん…!ちょっ…あっ…ダメです…んんっ……はぁ…ふっ…・ん…ちゅ……ちゅ…」

 一瞬抵抗を試みるが、混乱のあまり動きが止まり、流されるままに、それを受け入れる愛名。

「んぁ…!ちゅぷ…あぁ…はふっ…あ…んっ…ちゅっ…ん!」

 攻める様なキスに、愛名は背中を反らせ、後ろに手を着く。

「ふふっ…あふっ…ん~…ん。ぺろっ…んちゅ…あはぁ…」

 幸果はそれを追うように、半ば覆いかぶさるように体を寄せ、さらに激しくキスの雨を降らせる。
 どれくらいの長さ続いただろうか、ゆっくりと、二人の舌が、口が離れる。

「はぁ……はぁ…はぁ…ふふっ…どう?」

 荒い息で、淫靡に感想を尋ねる幸果。

「あ…・あはぁ……ふぁ……はい…その…気持ち、良くて…その…どうにかなってしまいそうで……」

 脳みそが茹る様な、初めての感覚に包まれた愛名は、もう何も考えられず、ただ事実のみを口にする。

「そう……じゃあ、もっと気持ち良くしてあげる……」

 愛名の返事に気を良くしたのか、幸果はさらに攻める。
 制服の上着の下から中に手を入れ、直に肌に触れる。

「あ、ちょっ…!待ってください…!」

 さすがに愛名も抵抗するが、上手く力が入らず、殆どされるがままに体を弄られる。
 おなか、脇、おへそ、今まで他人に触られたことのない柔らかな肌を、熱をもった手が這いまわる。

「ダメですそんな…!こんなのって…!……んっ!」

 思わず、声を上げてしまう愛名。

「…んふっ…!」

 その様子に気を良くしたのか、さらに攻め立てる幸果。
 徐々に手の動きは激しさを増し、遂には胸へと……優しく、激しく、刺激を与え続ける。

「ん…!あぅ……!そこは…!」
「……いいから、任せて。…ほら、力を抜いて…」

 そして、その手がスカートの――――――


・・・・・・


「ひぁぁああぁぁぁぁぁぁぅうあぁ!!!」

 そこで、目が覚めた。
 愛名は慌てて周りを見回す。
 間違いなく、自分の部屋のベッドだ。
 時間は夜の十時。
 どうやら、ベッドの上に寝転がっていて、そのまま寝てしまっていたらしい。

「………夢?……なんて夢なの……!」

 内容を思い出して、かぁ~…と全身が真っ赤に染まったような感覚。
 幸果に、抱きつかれるようにして指導を受けた所までは、確かに今日の夕方の出来事。

「……なのに、あそこからあんな妄想…!」

 今までに無かった、自分の情欲を思い知らされたような気がして、愛名は恥ずかしさと自己嫌悪でいっぱいになる。

「けど……もしあんな事が実際に…」

 と、そこまで口にして、愛名はぶんぶんと大きく頭を振る。

「もう!バカバカ!私のおバカ!」

 ぽかぽかと自分の頭を叩くが、熱をもった頬と体は治まらない。
 少し頭を冷やそうと、テレビの前に行き、ゲームのスイッチを入れる。
 結局成功しなかったあの連続技を、もう一度練習しよう、そうしよう。

 思考を切り替えようとゲームを始めたが……むしろ逆に、さっきの夢と、現実に抱きつかれた時の感覚を思い出してしまう。

「ん~……もう…!はぁ……お風呂でも入ろ…」

 そんなこんなで、一度も連続技は成功しないまま、愛名の人生が変わり始める一日目は終了したのだった。

               第8回につづく。

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