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オリジナル小説『私イズム!』第2回。

第一回はこちら。


 第一章
[レバーを一瞬下に入れてからジャンプすると大ジャンプになるからそんな感じで飛べ] その1


「いや~ごめんごめん!まさか秘密にしてるとは思わなかったからさ!」

 どこまでも軽い菜射の言葉に、深~くため息を吐く愛名。

「……もういいですぅ……私も対処を間違えましたし…」

 学校からの帰り道、校門で待っていた菜射から逃げ切れず、一緒に帰宅しつつの会話だった。

「けどじゃあ、あの時丁度チャイムが鳴って良かったよな!なんとなくうやむやな感じになったし」
「………だといいですけど…あまりなっていたとも思えない気が…」

 明日から、クラスメイト達の愛名を見る目は、少なくとも今日までとは違うものになるだろう。

「まあ、気にしても仕方ないじゃん?ね?」
「……そんな無責任な……」

『綾塚家に生まれたからには、常に他人の羨望を受ける存在であれ』、と子供のころから言われ続け、春麗女学院に入学してからの一年半も、それを外れることなく生きてきたのに…。
 もし家に妙な伝わり方をしてしまったらどうしたらいいんだろう…。
 はぁ……と深いため息をつく愛名に、菜射はさらに声をかける。

「そんなに落ち込まない!落ち込まない!大体、好きな事を隠して生きるなんて、つまらないだろ?もっと素直に生きたほうが幸せだって!」

 その言葉に、さらに深いため息を吐く愛名。
 そんな簡単にいけば苦労はないですよぅ……。
 そう思いつつも、心の中に別の感情が湧きあがるのも感じていた。

「……けど、言うとおりなのかもしれない…」

 ずっと無理をしてきた、それは確かにそうなんだ。
 もっと素直に、自然に生きたい。
 そんな風に考えたことは、両手の指じゃとても足りない程有る。
……ある意味、良いきっかけなのかもしれない。
 もっと自然に生きていく為の、きっかけに―――――。

「でさ!今日これからどう?」
「え?な、なんですか?」

 少し考え込んでしまっていた愛名は、菜射の唐突な誘いに戸惑う。

「だから、対戦。時間無い?」

 菜射は、左手でレバーを操り、右手でボタンを押すゼスチャーを見せる。

「あ…えっと…時間は…有りますけど…その……ちょっと…」

 昨日の恐怖が、蘇る。
 また、あんな目にあって、今度は助けが来ないと思うと……愛名は無意識に、自分の体をぎゅっと抱きしめる。

「…そっか、じゃあ……アタシ達の秘密基地、来る?」

 それを察してか、ニカッと笑顔を見せて、菜射はそんな事を言う。

「……秘密基地…ですか?」
「そっ、秘密基地、安全だよ?」
「…なんか、響きからして怪しいです……それに、私達はまだ知り合ったばかりで……」

 と、突然、ガシッ!と菜射は愛名の両手を包み込む様に握る。
 その手の持つ「熱」が、体に伝わってくるのを感じて、愛名の体温が上昇する。

「ねえ、仲間は居るの?一緒にゲームをやる仲間」

 菜射の可愛らしくも強さのある顔が近付き、瞬間、胸が高鳴る。
 真っ直ぐに自分の瞳を射抜くその視線はとても綺麗で眩しくて、少し、押される。

「え?えっと…その…居ない…ですけど…」
「…欲しくない?仲間」

 ……欲しくない…と言えば、それはきっと嘘になる。
 昨日、一大決心でゲームセンターに出かけたのだって、一人でゲームをやり続ける事に寂しさを感じたからだ。

「どう?」
「…………その…欲しい……です」

 それは何気ない言葉だったが、人に弱みを見せず、自分の欲望を抑えに抑えて生きて来た愛名にとっては、勇気を振り絞った言葉。不意にあふれ出た、真実の想い。

 そして、人生を変える言葉だった。

 その言葉を聴いた菜射は、弾けるような笑顔を見せた。

「うん!じゃあ行こう!」

 そして、手を引いて走る。

「あ…ちょっと!あの…!」

 その強引さに戸惑いつつも、何故か不快な感覚は無かった。
 それどこか、徐々に、自ら足を動かし、後を付いていく。
 手を引かれて、昨日出会ったばかりの女の子と知らない道を一緒に走る。
 気付けば、ドキドキと胸は高鳴っていた。

                第三回につづく。

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