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オリジナル小説『私イズム!』第27回。

第26回はこちら。


八章

[ラスボスは、卑怯なくらい強いのが丁度良い] その2


 [チーム圧殺]の先鋒は、幸果たちも今日初めて見る陣悟使いの男だった。

 燕がどこからか連れて来たプレイヤーらしいのだが、その実力は、今日の大会で決勝までの四試合、三分の二近くの勝負はこの男の操る陣梧が勝利を奪っている。

 全国的には無名のプレイヤーだが、決して侮れる相手ではない。

「……私が行くわ~」

 幸果が、進んで先鋒を名乗り出る。
 『闘演舞』では、試合順は、試合毎に自由に変更できる。
 相手キャラに合わせて有利なキャラを選んだりする事も可能で、ゲームの前から既に駆け引きは始まっているのだ。

 ただし、一度筐体の前に座ったら、もうそこから変更は出来ない。

 相手が真っ先に座ったのは、順番を固定にしてあるのだろう。

 先鋒向きのプレイヤー、大将向きのプレイヤーと言うのは確実に存在する。それを活かす事を優先した順番決めも、一つの選択肢だ。

「待って下さい、幸果さんは大将の方が…私が行きます」

 座る前に愛名が引きとめようとするが、幸果はそれを断る。

「相手の手の内が見えないのだから、まずは私が行った方が良いのよ~」
「けど………!」
「……まあ、確かにな…」

 菜射もそれに同意する。

「アタシの陣梧だと、同キャラ対決は手の内が見えない向こうが有利だ。…あっちは、燕がアタシの癖を教えてるかも知れないしな。チココ 対 陣梧はチココが不利だし、無理に危険を冒す必要も無い……つまり、対応力も有って、キャラ的にも若干有利なゆっか姉の宗義が行くのが一番安全なんだ。決勝だし、慎重過ぎるって事は無い……だろ?」

 その言葉に幸果は笑顔で頷き、愛名も納得せざるを得ない。

 両者が筐体前に座ると、会場を緊張感が包む。

 ある種異様な静けさが空間を漂う中、実況の声が響く。

「さあ!いよいよ決勝戦、第一試合を開始します!……それでは……」

 そこで一度言葉を切り、会場全体に目線と動きで合図を送る。

「勝負……」

「「「「「「「開始ぃー!」」」」」」」

 観客が一斉に叫び、同時に押されるスタートボタン!

 『闘演舞』決勝の恒例の儀式だった。
 ゲームの勝負開始の瞬間に、特徴的な掛け声などがある場合は、司会と観客が一斉にそれを叫んでゲームが開始される。
 特に意味が有る訳ではないが、会場の一体感を高めるには役立っている様だ。

 そして始まった第一試合。

 相手の陣梧は、かなりトリッキーに動き回る。

 普通、陣梧はキャラ的にも力押しキャラで、特に「横押し」…つまり、地上戦が得意なキャラだ。
 だが、強引な攻めよりも立ち回りを重視したその陣梧の動きは今まで見たことの無い動きで、幸果も翻弄される。

「……上手い…!」

 思わず菜射の口からそう言葉がこぼれる。
 同じ陣梧使いだからこそ解るその動きのテクニックは、ガン攻めを得意とする菜射とは相容れない物だったが、それでも、上手いと思わせる動きだった。

「勝負、決着!」

 1ラウンド目、決着―――――幸果の、敗北だった。
 会場がざわつく。
 それは幸果が負けた事と、相手の陣梧の動きが衝撃的だったこと、両方へ対するざわめきだった。

 だが、幸果自身は冷静だった。
 まだ1ラウンドを取られただけだ。
 2ラウンド先取なので、次勝って五分にする! 
 この心の切り替えも、強さの秘訣だった。

「ゆっか姉、ぶっぱで暴れよう」
「わかったわ~」

 ラウンドの間に、菜射が幸果にアドバイスをする。

 陣梧使いならではの目線は、有効な助言を生み出す事もできるようだ。

 ちなみに「暴れ」とは、相手の連携の隙間に攻撃を出す事を言う格ゲー用語だ。
 連続ガードにならない攻撃を出された場合、攻撃と攻撃の間で暴れる事によって相手の次の行動を潰すと同時に、反撃でダメージを与える事も出来る。

 逆に攻撃側は、「暴れ潰し」と言われる、相手の「暴れ」に打ち勝てる技を出したり、「暴れ」を読んであえてガードしたり、バクステやジャンプでかわし空振りの隙を付いたりと言った選択肢がある。

 菜射の見立てでは、相手の行動は「暴れ潰し」が多いので、通常技で暴れるよりも、無敵技をぶっぱなして暴れ潰しを狩れ、と言うアドバイスだ。

 そしてそれは的中し、連携を上手く潰した幸果は、そこから怒涛の反撃!

 宗義の強烈な連続技をミスなく決め、そのまま勝利を奪った。

「お~っと!宗義が取り返した!さすが[ぶっぱクイーン]!今日もぶっぱが冴えまくる!」

 これで一対一の五分……勝負は最終ラウンドへと持ち込まれた!

 最終ラウンドは、2ラウンド目にぶっぱで狩られた暴れ潰しを警戒して、ガードを固めがちになる陣梧。

 だが、幸果はそれを読んでダッシュで近寄り、無敵技ではなく投げをぶっぱなす!

 それが見事に決まり、そのまま流れを掴んだ幸果が勝利を奪った。

 にっこりと笑顔を浮かべて振り向いた幸果と、ハイタッチを交わす愛名と菜射。

「決まったぁぁーーー!第一試合は、「キューティープリティービューティーズ」が取りました!」

 実況が叫び、会場が盛り上がる中、「チーム圧殺」の二人目が椅子へと座る。

 それは、愛名がランバトでみた伊臥使い。

 伊臥 対 宗義は、基本的には宗義が有利だと言われている。

 起き攻めが強力な伊臥だが、無敵技が強力な宗義は、他キャラと比べて起き攻めを切り返しやすい。
 逆に伊臥は、起き攻め能力や攻撃力がずば抜けている代わりに、防御的に使える技が少ないので、宗義が強引に押してくると、なかなか主導権を握りづらい。

 とは言え、伊臥の破壊力が消えてなくなるわけではないので、無敵技を読まれて、隙に連続技を決められれば、あっという間に追い込まれてしまう。
 
 つまり、お互いに一つのミスが大ダメージにつながる組み合わせだ。
 
 当然お互いにそれは理解しているので、慎重な試合が展開される。
 
 だが、隙を付き幸果宗義の足払いがヒット!

 相手もなんとかガードで凌ごうとするが、単純だが決まれば大ダメージに繋がる投げと打撃の厳しい二択に、ついにガードを崩され、そこから六割の体力を奪われる!

 さらに起き攻めをくらい、そのまま幸果の勝利。

 2ラウンド目も勢いに乗った幸果が勝利を掴み、あっという間の決着!

「おお~っと!さすが強い幸谷 幸果!このまま3タテで勝負が決まってしまうのか!それとも、意地の逆3タテを見せられるか風斬 燕!」

 先鋒がそのまま3勝して勝負を決まる事を3タテと言う。
 逆に、二人勝ち抜かれた状態から、三人目が三連勝する事を逆3タテと言い、最も盛り上がる展開の一つだ。

「3タテなんて、絶対にさせないの……」

 燕は決意を持って呟く。

 心なしか、いつもよりも堂々としている。

 そして、幸果に強い視線を向けた。

 幸果はそれに気付いて笑顔を向けてくるが、その笑顔の裏には、「負けない」と言う強い意志が感じられた。

 続いて燕は、愛名に視線を送る。

 愛名もそれに気付いて軽く会釈をするが、その視線に何か妙な感情が混じっているような、不思議な感覚を覚えた。

 だが、その答えが出る前に、燕は視線を逸らし筐体の前へと。

 愛名は首をかしげるが、直ぐに気持ちを切り替える。

「………これで、決まるかもしれないんですね……!」

 そう思うと、ドキドキが止まらない。

 自分は役に立てなかったけど、けど幸果さんたちの優勝を間近で見られるだけでも――――――。


 ――――――だが、その想いは打ち砕かれる事となった。


            第28回へつづく。

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