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オリジナル小説『私イズム!』第28回。

・第27回はこちら。


第八章

[ラスボスは、卑怯なくらい強いのが丁度良い] その3


「ああーーーっと!またしてもぶっぱが噛み合わない!そして隙に連続技!……おおぉぉーーーっと決まったぁーーー!風斬 燕、何とか3タテを防ぎましたぁーーー!」

「「「「「「「「おおおぉおおおおーーーーーーー!!!!」」」」」」」」

 会場が大きく沸く。
 幸果が、ストレートで敗れたのだ!

「……そんな!」

 愛名は愕然と画面を見つめるが、結果は変わらない。

「[ぶっぱクイーン]のぶっぱをことごとくガードしたトイズの読み勝ち![ぶっぱクイーン]の当て感を、[未来視の銃口]の先読み能力が凌駕しました!」

 冷静に勝負を分析する実況の声が響く。

「……ごめんなさい~」

 幸果が謝りながら席を立つ。

「仕方ないさ、アイツ、相当ゆっか姉の動き研究してやがった。あんなにもぶっぱが当たらないのは初めて見たぜ」

 そう、燕の対処は完璧だった。
 本当に、未来が見えているのかと思うほどに。

「次は愛名ちゃんと幸果ちゃんのどっちが行くの~?」

 その言葉に、愛名は我に帰る。

「私が…!」

 自分が先に行けば、負けてもまだ菜射が居る。
 自分は大将の器じゃない。
 そんな思いから出た言葉だった。

 しかし………。

「アタシが行く」

 そう言って、菜射が筐体の前に座った。

「ちょ…ちょっと菜射さん!どうして…!」

 愛名の問い掛けに、笑顔で、しかしその中にも悔しさを覗かせながら、菜射は答える。

「……はっきり言おう、アタシは、燕と相性が凄まじく悪い!」
「……えぇっ!!?」

 そのあまりに堂々とした宣言に、愛名は頭がクラクラするのを感じる。

「今まで何度も戦ったが、勝率は二割も無い……こんな相手は燕だけだ。それぐらいの相性の悪さなんだ」
「そんな……」
「だから愛名……もしもの時のために、お前はしっかり見ていろ!アタシの試合を、そして相手の癖やパターンを出来る限り記憶するんだ!」

「……でも……私…!」

 唐突に降って沸いたような、「大将」と言う重圧に、潰されそうになる愛名。

「…しっかりしろ!」

 菜射の大声に、愛名の身体がビクン!と震える。

「お前なら出来る!何のために今まで努力してきたんだ!」

「………今まで…」

 その言葉に、愛名の脳裏に、映像が浮かんでは消える。

 菜射に出会い、この世界に入り込み、そして、特訓の日々、そんな中感じた友情の暖かさ、家族との関係、自分の存在意義………いろいろな事が思い出される。

 その全てが、格ゲーが無ければ出会えなかった事。

 今自分は、その最高峰に居る。

 自分が相応しいかどうかは問題じゃない……!

 数多くのプレイヤーの夢を打ち抱いて、私は、今、ここに居る…!

『望む物全てを奪い取れ!』

 浮かんだのは、父の言葉。

 そうだ、私は何の為にここに居るの?

 ……勝ち取る為…!

 自分の力で、全てを勝ち取る為に……!

「………いけるな?」

 愛名の目の色が変わったのを、菜射は感じ取る。

「……ええ!安心して負けてくださいっ!」
「……あはは!その意気だ!」

 菜射は豪快に笑いながら、愛名の腕をバンッと叩く。

「けど、アタシだってやるからには勝ちを諦めるつもりは無いぞ。隙があれば確実に勝ちに行く!」
「……はい!」

 そんな二人のやりとりを微笑ましく見ていた幸果も加わり、菜射を応援する。

 しかし――――――

「決着ぅぅぅーーーー!!![ブラックホール]の投げをことごとく跳ね返すその様は、まるでホワイトホールか!……さあ、盛り上がってきました!これで状況は五分!大将戦です!」

 菜射は敗北し、「くそっ!」と一声上げて、席を立つ。

「悪い………後はまかせた…!」

 菜射の手が、愛名の肩に乗せられる。

 愛名は感じていた。

 その手を通じて、自分が今受け取った物を。

 それは、一言で言うと、「想い」。

 ここへ来るまでに積み上げてきた、全てを託された。

 重い……素直にそう思う。

 けど、だからこそ、愛しい。

「愛名ちゃん」

 もう片方の肩に、幸果の手。

 そこからも、伝わってくる。

「……あなたと、ここまで来れて、本当に嬉しいわ」

「幸果さん」

「………でも、どうせなら優勝して、最高の喜びを共有しましょう~!」

 最高の、笑顔。

「………はい!」

 そして、愛名は筐体の前へと座る。

 心臓が激しく脈動する。

 ドクドクドクドクと血の流れる感覚が解る程に研ぎ澄まされた感覚。

 大きく息を吸う。

 少しだけ鼓動が落ち着いた気がする。

 …………緊張している。

 していない筈が無い。

 でも良いんだ。

 これで勝負が決まるんだから、しなきゃ嘘だ。

 それでも、乗り越える。

 幸果さんの為に。

 菜射さんの為に。

 香澄の為に。

 ………父の為に。

 そして何よりも、自分の為に……!!!

 私は、自らのこの手で全てを手に入れるっ!

「さぁぁーーーー盛り上がってきた盛り上がってきたぁぁぁーーー!!!」

 大音量で響く、実況の声。

「『闘演舞』「PWM」全国大会もついに最後の試合だ!泣いても笑ってもこれで決着!全国の格ゲープレイヤーの想いを背負い!今、最後の戦いが始まる!勝つのはどっちだ!勝つのはどっちだ!勝利の女神が微笑みかけるのは、どっちだぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!」
 煽る、煽る。


 空気を、緊張を、歓声を!

「全てをぶつけろ!今までの努力を!研究を!生きてきた全てをこの一瞬に!行くぞ行くぞ行くぞぉぉぉぉぉーーーーー!!!!」

 実況と観客の間で、アイコンタクト。

「勝負……!」

「「「「「「「「開始ぃぃぃぃぃいぃいい!!!!!」」」」」」」」

 震える空気に押されるように、ゲームスタート!

 深呼吸をしながら、愛名はカーソルをチココへ。

 直ぐにボタンを押さずに、そのまましばらく心を落ち着かせる。

 それは相手も同じで、トイズにカーソルを合わせたまましばらく動きが止まる。

 両者が選べば、その時点で試合が始まる。

 このままタイムアップまで、精神集中に使うのも一つの手だ。

 だが……愛名は攻める!

 燕よりも先に、ボタンを押してキャラを決定!

(さあ……私はもう、準備万端ですよ!)

 それをアピールする!

 すると、それに対抗するように、直ぐに燕もキャラを決定する。

「さあ…両者キャラ選択が終了しました…!トイズ対チココ!チココを大将に持ってくると言う「キューティープリティービューティーズ」の戦略がどう出るのか……!」

 先ほどまでとは違い、重厚な雰囲気の実況が響く。

「………ふぅ~……」

 愛名は、一つ息を吐く。

「…………良し!」

 覚悟、完全に完了!

『勝負…開始!』

 戦いが、始まった!

            
         第29回につづく。

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