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オリジナル小説『私イズム!』第30回。

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第八章

[ラスボスは、卑怯なくらい強いのが丁度良い] その5


「さあ、2ラウンド目開始です!このままの勢いでトイズが優勝を決めるか!それともチココが意地を見せるのか!」

『勝負…開始!』

 2ラウンド目の開幕!
 トイズは強気に前方ダッシュ!
 当たればダウンを奪い起き攻め、ガードされても連携の始動技となる[足払い]を出す……が、次の瞬間!

 画面暗転![ゲージ技]発動の演出!

 前のラウンドで使わなかったPMゲージは、次のラウンドに持ち越される!
 
 愛名はそれを使って、[あたしのメイドに何すんのよ!]発動!
 
 無敵時間有りの[1ゲージ技]!

 愛名は、あえて開幕から一瞬様子を見て、相手が近付いて来たのを確認して技を発動させたのだ!
 コマンドだけを入力しておいて、ヒットさせられそうならボタンを押して発動、というのは上級者の良く使うテクニックだ。

 もしも相手がバックして距離を離されても、ボタンさえ押さなければ無駄に発動してゲージを無駄にしないで済むという利点がある。

 今回は、見事にこれがヒットした!

「いきなりのゲージ技ヒットぉぉ!だが悲しいかなダメージが低い!」

 [あたしのメイドに何すんのよ!]のダメージは1割程度しかない。

 無敵時間、と言う利点は有るが、ゲージを使う割にはダメージ的には物足りないと言えるだろう。 

 しかし、最初の一発を当てて流れを引き寄せた!

 チココはそのまま起き攻めに入る!

 [お食事の用意です]でテーブルクロスを重ねるにはタイミングが少し間に合わない。

 純粋に、中・下段、もしくは投げの選択!

(ここの選択肢は……!)

 愛名は[しゃがみ弱攻撃]で下段を攻める!

 トイズもしゃがみガードでそれを防ぐ!

 だが、愛名チココはそこから、[立ち強攻撃]を出す!

 これは、ヒットしていたら繋がらない[暴れ潰し]だ!

 そして、暴れていたトイズに見事にカウンターヒット!

(良し!一本先取して強気な状況なら暴れて来ると思いましたよ!)

 そこへ追撃を決めてダウンを奪う!

 さらに起き攻めへ!
 今度はテーブルクロスを重ねる!

 チココが勝つには、とにかく起き攻めで地道に体力を奪うのが最も確実な戦法だ。
 一度ダウンさせたら、勝つまで逃がさない位の気概で挑む!

 そして、何度か起き攻めに成功し、トイズの体力を半分まで減らす事に成功した!

(このまま、倒しきる…!)

 しかし、次の起き攻めで[ガンアッパー]を食らってしまう!

「いけない……!調子に乗りすぎました!」

 幸い、投げを狙おうと歩いて近付いていた所だったのでカウンターヒットは逃れた。
 状況はほぼ五分!
 愛名は冷静に相手の動きを観察すると、[特殊弾装填]の開始動作が見えた!

(二度は見逃しません!)

 今度は直ぐにダッシュして、装填前に攻撃を叩き込む!
 2つ溜まっていたPMゲージを駆使して、2ゲージ技を絡めた連続技!

 三割強のダメージを奪う!

 これでトイズの残り体力は一割半程度!

 しかも、[特殊弾装填]は出来ていない状態!

 愛名は体力差を活かし、強気に攻める。

(さっきは守りに入りすぎたからダメだったんだ・・・・・・今度は冷静に攻めます!)

 リーチの長い技を、相打ち覚悟で振り回す。

 [特殊弾]ならば、2ヒットして追撃が決まるような場面でも、普通の[精密射撃]ならダメージでは負けるけれどその後の状況は僅かに不利な程度。

 体力でリードしている今なら、この戦法は有効!

 そして体力の削りあいは続き、最後は斜め下に発射された[角度D]の上を、チココの飛び道具[ご、ごめんなさい]が飛び越し、同時にヒット!

「取ったぁーーー!チココが2ラウンド目を取り返した!これで一対一!」

「良しっっっ!」

 喜びと安堵が同時に訪れる愛名。
 チココの体力は残り3割強まで減っていたが、何とか勝利を勝ち取った。

 残るは………

「さあ来た!来た!来たぞぉぉぉーーー!本当に最後の最後!これを取った方の勝利!嘘偽り無いラストラウンドだ!優勝は、風斬 燕のトイズか!綾塚 愛名のチココか!さあ行くぜ!行くぜ!行くぜぇぇぇお前らぁぁーーーーー!!!」

 最大級にテンションの上がった実況が、観客に合図を送る!

「『勝負……』」
「「「「「「「「「『開始!』ぃぃぃぃいぃぃいーーーーー!!!!!」」」」」」」

 ゲームの声と、観客、実況の声がシンクロし、ラストラウンドがスタートした!

「愛名っ!」
「愛名ちゃん!」

 菜射と幸果が、後ろから声をかける。
 何の助言も無い、ただ名前を呼ぶだけ。

 それは、愛名に全てを任せる、と言う信頼の証でもあった。

 愛名は心の中でその声に強く頷く。

 ……応えて見せますっ!
 
 
 ……だが! 

「あーーーーっっっと!まずはトイズの[足払い]がヒットぉ!」

 開幕ダッシュで間合いを詰めようとしたチココに、足払いが刺さる!

 そしてその隙に[特殊弾装填]!

 続いてバックステップで間合いを話す!

 慌てて、ダッシュジャンプで追いかける愛名チココ!

 しかし、待ち構えていたかのようにそこへ[角度B]で対空!

「……いっっっつ!」

 [特殊弾]が2ヒットして、そこからの追撃!

 二割のダメージと同時に、奪われるダウン!

 流れるように[角度A]重ねの起き攻め!

 トイズの選択は……いきなり中段!
 これが、しゃがみガードをしていたチココにヒットする!

(まずい…!これはマズイです…っ!)

 [中段]ヒット→[角度A]ヒット→そこからの追撃!

 と言う流れで、さらに[モースト]を絡められ、空中連続技へ!

 先のダメージと合わせて、合計6割持っていかれるチココ!

「ああっとぉーーー!トイズの猛攻!一気に勝負を決めに行くかぁーーー!」

 追撃の手を緩めない燕トイズは、空中連続技の後で、先に着地してチココの着地を攻める!
 チココは何とか逃げようと空中ダッシュするが、そこへトイズの[ジャンプ弱攻撃]が刺さる!

(…………いけないっ!!)

「当たったぁーーーこのまま連続技につなげて終了かぁーーーーー!!」

 そのまま[ジャンプ中攻撃]→二段ジャンプ→[ジャンプ中攻撃]→[ジャンプ強攻撃]→[ジャンプ武器攻撃]へと繋き、最後はゲージ技の[下から見上げてろ!]でとどめ!

 ……と、誰もがそう思った瞬間、チココが[魂カウンター]発動!

(そんな簡単に、終わる訳にはいきません!)

 しかし、そのタイミングではどう考えても相手に当てられない!

 だが、愛名の狙いはそこには無かった。

 トイズの[ジャンプ武器攻撃]は、カウンターで食らうと強く横に吹っ飛ぶという性質がある。

 普段ならば、そのまま画面端にぶつかって、さらに追撃が入る性質では有るが、この場合は違う!

 その後の[下から見上げてろ!]は空中から斜め下へと銃を連射する技だ。
 つまり、カウンターで食らって横へ吹っ飛んでしまえば、その技は当たらない!

 最後に[下から見上げてろ!]が来る事を読んで、それを避ける為にあえて[魂カン]を出し、[ジャンプ武器攻撃]をカウンターで食らってみせたのだ!

「これは上手い!チココの頭脳プレイだ!トイズの[下から見上げてろ!]は誰も居ない場所をひたすらに撃っているぅぅぅ!!!」

 トイズの[ジャンプ武器攻撃]から[下から見上げてろ!]への繋ぎはかなり急いで、先行入力的にしなければならないのも幸いし、見事に技をスカらせることに成功した愛名チココ!

(生き延びました……!)

 技が終了し、無防備に降りてくるトイズ!

 [下から見上げてろ!]は、ヒットやガードさせた場合は、安全に着地できるが、空振りした場合は隙だらけになってしまう!

 愛名は、着地の隙に連続技を叩き込んで、約2割体力を奪いダウンさせる。

 ……しかし、会場の空気はもう、トイズの勝利をほぼ確信しているかのようだった。

 それも当然だろう。

 最後の一撃は避けたと言っても、チココの残り体力は一割程度。

 しかも、[PMゲージ]も溜まっていなければ、[魂ゲージ]も使ってしまって、[モースト]を絡めた連続技も使えない。

 ノーゲージでも連続技の強力なキャラならまだしも、非力なチココでは、何度も連続技を決めなければならない。

 その間にトイズは、技を数発当てれば勝ち。

 連続技ならさらに確実だ。

 これを逆転するのは無理………誰もがそう思っていた。

 ……愛名達以外は!

 菜射は、幸果は、信じていた。
 ただ、愛名の勝利を!

 愛名は、信じていた。
 仲間とやってきた全ての時間を。

 自分自身の持っている力を!

 私は、全てを勝ち取れるっ!!!

 
         第31回につづく。

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