映画『この世界の片隅に』を少しでも多くの人に見て欲しいがゆえにネタバレ無しで素晴らしさを伝えたい感想。
・見てきました、映画「この世界の片隅に」。
のん(能年玲奈)さんが声優として初主演なことでも話題のこの映画ですが……心の底から良い映画でした…!
この作品はなんて言うか…積み上げる映画です。
少しずつ、積み上げて、積み上げて、積み上げて。
丁寧に、淡々と、時に適当に、けれど少しずつ確実に、積み上げて。
――――壊れる。
壊れて、壊されて、壊して。
残酷に、無慈悲に、時に自らの手で、積み上げたものが、壊れる。
どうにもできなくて、何もできなくて、うずくまって泣くしかなくて、虚しさと悔しさと無力感に、声を荒げて怒るしか無くて。
それでもそこから、また積み上げる。
大事に、愛しく、悲しみと向き合いながら、それでも笑顔で、積み上げる。
そうして最後に、小さな、けれどとても大きな、幸せに辿り着く。
もう手が届かないとさえ思われた、遠く高い幸せに、積み上げたものの上に立ち、手を伸ばし、辿り着く。
その幸せと共に、生きていく――――そこへ至るまでの、物語。
……そういう映画でした。
凄く、心が揺さぶられるというか……エグられます。
アニメ的に言うと、作画・・・というか、キャラクターの魅せ方や、背景の描き方、エピソードの繋げ方がとにかく上手くて、主人公すずさんが、この世界でどう人と係わり、何を想い、どう生きていくのか、凄く素直に心に入ってきます。
だからこそ、そうして積み上げたものが壊れる時の怖さや悲しさが、物凄く伝わってくるのですよ。
いきなり事件が起こって・・・とか言う作品ではなく、「すず」という一人の少女が積み上げていく様子が丁寧に丁寧に描かれて、それを見て自然に笑顔になれるような、そういう幸せで笑顔のある日常を、リアリティを持って感じられたからこそ、世界が突然変化する恐ろしさに、胸を締め付けられるのです。
何度涙を流したことでしょう。
けれど、映画を見終わって、最後に残るのは、幸せなのです。
辛さも痛さも悲しさも、全部飲みこんで、心の中に言葉に出来ない想いを根付かせつつも、幸せが残る。
それが本当に、素敵なのです。
……とは言え、はたしてこの作品が「感動作」かと言われると、少し違う気はします。
そんな安易で単純で安っぽい枠でくくれる話では無いです。
人は、心がえぐられると、自然と涙が出てくるものなのだなぁ・・・と。
それがどんな感情から来る涙なのか、自分ですらわからないことも多いのだけど。
でも、涙が出るのです。こんなにも、心に刺さるから。
軽いノリで、「なんか泣けるらしいから見てみよーう」くらいの気持ちで見ると大変なことになりますよ!と注意喚起したいくらいの、エグられ方をします。
それでも、だからこそ、この作品には見る価値が有るし、見ることによって感じたもの、得たモノが、宝物になるかもしれないと、そう思えます。
自分は片道1時間半かけて映画館まで行きしたけど、なんの後悔も無かったので、遠くの人も是非見に行って欲しいです。
近くに上映館がある人は言わずもがな!
本当に、たくさんの人に見て欲しいし、見られるべきだと思わされる作品でした!
あ、あと……のんさんが本職の声優さんでは無いので、いわゆる芸能人が声優をやることに拒否反応が出る人もいるかもしれませんが、演技が凄くしっかりしてるので、全く問題ないです。上手いです。
アニメ的な演技とは少し違うので、違和感を感じる人もいるかもしれませんが、それはもう序盤ですぐ消えます。
後半にはもう、ただただ すずさんの声でしかないですし、この声でしか、すずさんはありえないと思えるレベルです。
声にごちゃごちゃ言って見ない人間がいたら、自分がこの映画を見て流した涙をまとめた水の塊を投げつけて、びちゃびちゃにしてやりたいくらいです。
そして、
「お前は今、自分がびちゃびちゃだと思ってるかもしれないとけど、この映画を見たら、お前は自分の流した涙でもっとびちゃびちゃになるんだから、そんなのは たいしてびちゃびちゃでは無い!」
と言ってやりたいくらいです。
・・・・なんか変なノリが出ました。失礼。
ともかく、劇場に足を運んでみてください。
間違いなく、その価値と意味のある映画です。
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